引っ越したいと思いつつ、理想の家が見つからないままズルズルと2ヶ月が経とうとしているaruke_arukeです。今回は、住宅でも気にする建物の構造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造・木造とか)を見てみました。
住宅を探していると、木造は地震や火災が怖いとか、鉄筋コンクリートじゃないと音が気になるとか、その結果木造は家賃が少し安いとかいろいろ聞きます。オフィスビルでも地震や火災は怖いし、隣の音が聞こえるのが嫌なのは変わりありません。そもそもあまり木造のオフィスビルって聞いたことないし、オフィスビルは窓大きいがちなのも関係するかも知れないし...と思いながらestieのデータを使って調べてみました。
それぞれの構造の特徴
今回は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の4つに絞りました。雑にまとめるとこんな感じ...?
構造 | 木造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
---|---|---|---|---|
価格 | 安い | 普通 | 高い | とても高い |
耐震性 | 低い | 高い | 高い | とても高い |
耐火性 | 低い | 高い | 高い | とても高い |
断熱性 | 高い | 低い | 低い | 低い |
遮音性 | 低い | 低い | 高い |
高い |
緯度(気温)と構造
最初に思いついたのは、「寒いところでは断熱性の高い構造である」という仮説です。ですが大抵のオフィスビルは木造ではなく、緯度と構造の関係はあまり見つかりませんでした。日本には四季があるので寒くても暑くても断熱性は関係してくるので関係なかったのかも知れません。
最近不動産でよく聞くESG的にも断熱性が高い建物は望まれていると思うので、この観点では断熱性を諦めざるを得ない状態なのでしょうか...? 新素材・新工法にこっそり期待してます。
階数と構造
次に考えたのは、階数と構造の関係です。興味本位でコンクリートを作ってみたくなった中学時代、鉄筋コンクリートは引っ張る力と押しつぶす力のそれぞれに強い材料を組み合わせているんだと聞きかじったので、「高い建物はコンクリートを使って重さに耐えるだろう」と思いつつ調べ始めました。階数毎に割合を積み上げグラフで書いてみたところ以下のようになりました。
木造はほぼないですが、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の4構造でほぼ全てを網羅できていました。ちなみに、鉄骨造と鉄筋コンクリート造の両方を取り入れたビルはそれぞれ0.5棟とするなど、単純に按分しています。
思ったより積み上げグラフでは様子がわかりにくかったので、積み上げない折れ線グラフも下に書いてみました。
わかりやすいのは、木造はせいぜい3階建てであること。そしてビルが高くなるにつれて、鉄骨造(1〜3階)、鉄筋コンクリート造(3〜7階)、鉄骨鉄筋コンクリート造(8〜15階)が多くなるという傾向です。高さに応じて適した構造があるっぽいですね。このように、15階まではコンクリートは圧縮に強いから高い建物になるほどコンクリートを使うんだな...という中学時代の伏線回収で終わりでした。
しかし、一度コンクリートにシェアを奪われた鉄骨造が、16階あたりを境にまた使われるようになります。高さに応じて適した構造があるとして、突然16階建てから鉄骨が適した構造になるなんてあるんでしょうか? そういえば15階は、住宅で有名な階数です。
住宅の話では「15階建てのマンションと14階建てのマンションは大きく違う。」とよく聞きます。14階建ては二重床だったりそもそも天井が高かったりして住みやすく、逆に15階建てはそのような部分が削られているので、15階建てには注意した方が良いという話です。
これは建築基準法や消防法的に、高さが45メートルを超えると建物の制限が変わるからと聞いたことがあったのですが、具体的にどう変わるのかまでは調べたことがありませんでした。
・地階を除く階の構造耐力上主要な部分である柱及びはりは、鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造であること。
なるほど謎は解けました。念のためestieのデータベースを調べてみると確かに16階以上の鉄筋コンクリート造のビルはありません(地下が鉄筋コンクリート造のビルが按分されてグラフには現れています。)。
……いや、正確には1棟だけ登録されていましたが、調べ直したところ正しくは鉄骨造でしたので直しておきました。1000棟以上ある中の間違ったデータも、こういう知識があるとすぐ見つけられて良いですね。
基準階面積と構造
基準階面積については前の記事で説明していますが、ざっくり説明するとワンフロアの面積です。
おそらくオフィスには柱がない方がうれしいので、「基準階面積が大きなビルは(水平方向に強く支えられそうな)鉄骨を使うのでは?」という仮説の検証です。基準階面積に対する構造を出力してみたところ、以下のようになりました。
仮説は正しそうです。基準階面積が1部屋とは限らないので先ほどの仮説は基準階面積のみで検証できませんが、ワンフロアが大きいビルほど鉄骨を使っていました。基準階面積が大きいビルは階数が高いことが多いのもあり、徐々に鉄骨造が増えているのかも知れません。10坪あたりで鉄骨造が多いのは、10坪分なら鉄骨の圧縮強度でも余裕かも知れませんし、3階建て程度だから鉄骨造が多いだけかも知れません。
おわりに
今回は立てた仮説を検証しただけで、驚くべき発見ができなかったのは残念です。しかし、データをきれいにするために、建築基準法や消防法を学ぶアプローチもあると思えました。
他にも、地図上に構造を書いて地盤の強さを推定したり、ビルの重さの推定したりもやってみたいです。重量鉄骨造と軽量鉄骨造などの使い分けや、32階から鉄骨造が増える理由も調べたいです*1。
ちなみに東京タワーは鉄骨造で、東京スカイツリーは鉄筋コンクリートと鉄骨造を組み合わせた制震構造らしいです。
*1:気のせいかも知れない